せっかく時間をかけて積んだ積み木を、息子が一瞬でガシャーン。「あぁ、せっかく積んだのに…」とちょっとガッカリしたあと、また積んでまた崩される。これ、我が家のリアルな1歳児あるあるです。
「うちの子、積むより崩すばっかりで大丈夫?」「ちゃんと遊べているのかな?」と心配になるママも多いと思います。でも、発達心理学の研究を読み解くと、「崩す」遊びは1歳児にとってむしろ脳を育てる重要な行動だということが分かってきました。
この記事では、Piaget・Spelke・Whitebread らの研究を引きながら、なぜ1歳児が「崩すターン」を長く続けるのか、そして、その時間が何を育てているのかをやさしく解説します。我が家で「縦に積む」が初めてできた日のエピソードや、4種類の積み木を使い分けている実体験も全部書きました。「ちゃんと遊んでくれない…」と落ち込んでいるママに、少しでも肩の力が抜けるきっかけになれば嬉しいです。
こんなこと、感じていませんか?
- 積み木を買ったけど、息子は崩すばっかりで「ちゃんと遊んで」と言いたくなる
- SNSで「積み木で集中力が育つ」と見て買ったのに、うちは続かない気がする
- 同じ月齢の子は3〜4個積めているのに、うちはまだ並べるか崩すだけ
- 「せっかく積んだのに」と思うけど、楽しそうに笑う息子を止めるのもためらう
- そもそも1歳に積み木は早すぎたのかな…と買ったことを後悔しかけている
ひとつでも当てはまったら、この先を読んでみてください。「崩すばかり」は実は焦る必要がないと分かるだけで、毎日の積み木タイムが少しラクに、楽しくなります。
「崩す」遊びは発達上の重要行為|エビデンス3層構造

「崩すばかり」をどう捉えるかは、視点で大きく変わります。発達心理学の研究を3層で見ていくと、「崩す」が決して無駄な遊びではないことが分かります。
第1層|Piaget「感覚運動期」の操作的活動
発達心理学の古典、Jean Piagetの理論では、0〜2歳の赤ちゃんは「感覚運動期(sensorimotor stage)」と呼ばれる時期にいます。この時期の子どもは、物を触る・舐める・投げる・落とす・崩すといった「直接的な操作」を通して世界の仕組みを学んでいきます。
「崩す」も立派な操作のひとつ。「自分が手を伸ばすと、積んだものが倒れる」「ぶつかると音が鳴る」「上にあったものが下に落ちる」。これらの体験は、大人にとっては当たり前ですが、1歳児にとっては毎回が新発見です。
第2層|Spelkeの「コア知識理論」と因果関係の理解
米ハーバード大学のElizabeth Spelke教授が提唱した「コア知識理論」では、赤ちゃんは生まれながらに「物理」「数」「空間」「人」などの基本的な認識システムを持っているとされます。そして1歳前後に発達するのが、因果関係の理解です。
「自分の手→積み木→倒れる→音」という連鎖を、繰り返し体験することで赤ちゃんは「自分の行動が世界に作用する」という感覚を獲得します。「崩す」を何度も繰り返すのは、この因果関係を体に染み込ませる学習なんですね。退屈で繰り返しているのではなく、「もう一回やったら同じ結果になるかな?」を確認している、いわば小さな実験者です。
第3層|Whitebreadら「自由遊び」の発達効果
ケンブリッジ大学のDavid Whitebreadらは、2012年に「The importance of play」というレビューで、自由遊び(free play)が認知・社会・情緒の総合的発達にどう寄与するかをまとめました。
このレビューで強調されているのは、「大人が決めたルールではなく、子ども自身が選んだ遊び方」が脳の実行機能を育てるという点です。「積み木は積むもの」と大人が決めて教え込むより、子どもが「崩す」を選んだならそれを尊重する方が、自己決定・問題解決・創造性の発達につながります。
つまり、1歳児が「崩すばかり」なのは、本人なりに「これが楽しい」「これが学びたい」を選んでいる結果なんです。
なぜ「崩すターン」が長いの?1歳児の認知発達の特徴
「研究で大事って言われても、なんでこんなに長く崩し続けるの?」と感じるママも多いはず。1歳児の認知発達の特徴を、もう少し具体的に見ていきましょう。
特徴1|繰り返しが快感になる時期
1歳前後の脳は「同じことを何度も繰り返す」ことで強化される時期。同じ絵本を毎日読んでとせがむ、同じおもちゃを延々と触る、同じ場所に物を出したり入れたりを繰り返す——これらは全部、神経回路を太くしている学習行動です。「崩す」を繰り返すのも、その一環。飽きるまでが学びの完了サインなので、無理に止める必要はありません。
特徴2|「自分が世界に作用できる」を確認している
赤ちゃんが何かを叩いて音を出す、引っ張って倒すといった行動は「能動性(agency)の獲得」と呼ばれます。「自分の意思で世界を変えられる」という感覚は、後の自己肯定感や挑戦する力の土台になります。崩すたびに笑顔になるのは、この能動性が育っている証拠です。
特徴3|物理法則を体で学んでいる
重力・落下・音・連鎖反応。これらは大人にとっての「常識」ですが、1歳児にとっては「世界を理解するための基礎データ」です。崩した時の音、倒れる方向、転がるスピード——毎回違う動きをデータとして取り込んでいます。これが2歳以降の見立て遊びや、3歳以降の構成遊びの土台になります。
特徴4|「積む」より「崩す」の方が手に入りやすい達成感
1歳児にとって、3〜4個の積み木をまっすぐ積むのはまだまだ大きな挑戦。手先の微細運動が完成途上なので、頑張っても倒れてしまうことが多い。一方で「崩す」は、ほぼ100%成功する。達成感を得やすい遊びだから、まず「崩す」が先行するのは自然な流れなんです。
lino家のリアル|「縦に積む」ができた日と崩すターンの長さ

ここからは我が家の積み木との付き合いを正直に書きます。研究は研究、でもリアルの方が共感できる、というママも多いと思うので、エピソードベースで残します。
「せっかく積んだのに…」のガッカリ期
息子が1歳になった頃、出産祝いでもらった木製積み木を引っ張り出してみました。私が3個ほど縦に積んでみせると、息子は楽しそうに笑って——その瞬間、まっすぐ手を伸ばして全部を崩しました。
正直、ちょっとガッカリしたんですよね。「せっかく積んだのに」と。それからまた積む、また崩される。3回目には「もう積み木は片付けようかな」と思ったほどでした。
でもよく息子の顔を見ると、本当に楽しそうなんです。倒れる音にケラケラ笑って、私の顔を見てまた手を伸ばす。「これは本人にとって最高の遊びなんだ」と気づいた時、やっと「崩されてもいいや」とこちらが切り替わりました。
「縦に積む」が初めてできた日
1歳3ヶ月頃、いつものように積み木で遊んでいた時のこと。息子がちっちゃい手で積み木を1個拾い、もう1個の上にゆっくり乗せたんです。「あ、積めた」と思ったら、もう1個。3個積み上げて、嬉しそうに私を見ました。
その瞬間、心の中で「こっちに来てくれた…!」って感動しました。これまで延々と崩していた手が、初めて「積む」の側に動いた瞬間。崩していた時間は、ずっと無駄じゃなかった。重力や指の動きや、たぶん見えないところでぐんぐん準備が進んでいて、ある日ふと「積めた」になる。これが1歳児の発達のリアルなんだと思います。
今も「積む>崩す」で崩すターンが長い
1歳7ヶ月の今でも、息子の積み木遊びは「2〜3個積む→盛大に崩す→ニコッと笑う」のサイクルが基本。崩すために積んでいる感じすらあります。
これも研究を読んでからは「OK、その学習サイクルでいい」と思えるようになりました。崩しているように見えるけれど、実は「積む練習」「崩す体験」「音の体験」「達成の体験」が全部1セットで進んでいるんです。「崩すばかり」ではなく「全部やってる」と捉え直すと、見方が変わります。
月齢別「積み木との関わり方」目安

月齢ごとに、子どもがどんなふうに積み木と関わるかをまとめました。あくまで目安なので、お子さんの様子と多少違っても大丈夫です。
| 月齢 | 主な関わり方 | 育っているもの |
|---|---|---|
| 0〜10ヶ月 | 触る・舐める・口に入れる | 感覚統合・素材の認識 |
| 10ヶ月〜1歳 | 掴む・落とす・転がす・打ち付ける | 因果関係の理解・能動性 |
| 1歳〜1歳半 | 並べる・崩す・少し積む(1〜3個) | 物理法則・繰り返し学習 |
| 1歳半〜2歳 | 3〜5個積む・色や形で並べる | 手先の微細運動・分類 |
| 2歳〜3歳 | 形を組み合わせる・見立て遊び | 想像力・構成力 |
| 3歳以降 | 建物や乗り物などのストーリー構築 | 計画性・物語る力 |
ひとこと:「3個積めるのが1歳の目標」みたいな表現を見ると焦りますが、1歳半までは「並べる・崩す」中心で全然OKです。むしろ崩しまくった子のほうが、後で安定して積めるようになる傾向もあります。
1歳に合う積み木4選|実体験ベースのおすすめ

「崩す」を楽しめる積み木選びのポイントは、音・大きさ・素材。1歳の手で持ちやすく、崩したときの音や倒れ方が楽しめるものが、1歳児の能動性を引き出してくれます。我が家で実際に使っている、または検討した4つを紹介します。
1. エドインター つみきのいえ M|基本の木製積み木
定番の木製積み木。日本製で安全性も安心、出産祝いの定番として有名です。1歳児の手にちょうど良いサイズで、崩したときの「カラン」という音もやさしい。これが我が家の積み木遊びの中心になっています。
2. エドインター 森のあそび箱|積み木スタートに最適な総合セット
積み木・ビーズコースター・型はめ・木琴などが1台にまとまった総合知育玩具。「積み木だけだと飽きるかも…」と心配なママに最適。崩す→転がす→叩くと、1歳児が好きな動作が全部入っています。我が家でも長く愛用中です。
3. MODU ドリーマーセット|大型ブロックで「崩す」を全身で楽しむ
積み木の概念を拡張するなら、北欧発の大型ブロック「MODU」もおすすめです。1歳児が両手で持って、ドンと積み、ドサッと崩すスケール感は通常の積み木では味わえません。バランスボードや滑り台にも変化するので、運動と遊びを兼ねたい家庭に。長期間使えるので、投資価値の高い1台です。
MODU ドリーマーセット
北欧デンマーク発の大型ブロック。積む・崩す・乗る・押すと多様な遊び方ができ、運動と知育を同時に育てる
📌 こんな人におすすめ:1歳から長く使えるスケールの大きい積み木を探しているママに
4. くもん くるくるチャイム|「崩す」と「転がす」の中間体験
厳密には積み木ではありませんが、「ボールを入れる→転がる→落ちる→チャイムが鳴る」の連鎖は、1歳児の因果関係学習にぴったり。崩す快感と転がす快感が同居する珍しいおもちゃで、我が家でも長期愛用中。30分集中することもあります。
くもん くるくるチャイム
色付きボールを穴に落とすと螺旋状にくるくる回って下までゆっくり転がるシンプル設計。10ヶ月〜長期使用OK
📌 こんな人におすすめ:シンプルなおもちゃで集中力を伸ばしたい・1歳前後の指先発達を促したい家庭に
このほか、ピタリコのような「形合わせ+積む」の知育玩具も1歳児の発達と相性がよくおすすめ。1歳の知育玩具をまとめて検討したい方は、こちらの記事もどうぞ。
「崩す」を楽しむ環境づくり|lino家のコツ
「崩していいよ」と頭で分かっていても、フローリングの上で大きな音が続くとさすがにストレスになります。我が家で実践している、崩す遊びを安心して楽しむためのコツをまとめます。
コツ1|厚手のジョイントマット or ラグの上で遊ぶ
音と振動を抑えるだけで、ママの精神衛生がぐっと良くなります。階下への音も気になる集合住宅では特に重要。我が家は厚さ1cmのジョイントマットを敷いていて、崩した時の「ガシャーン」が「コトッ」くらいに緩和されています。
コツ2|ママも一緒に積んで一緒に崩す
「ママ、これ積んでみて」と並んで積む。「じゃあ崩そっか」と一緒に倒す。これだけで、子どもの中で「崩す=悪いこと」ではなく「楽しい体験」として定着します。共視聴や共遊(co-play)は、研究でも子どもの社会性発達に効くと言われています。
コツ3|「崩していいよ」と声に出して伝える
意外と効くのが、言葉での肯定。「ガシャーンしていいよ」「崩すのも楽しいね」と笑顔で言ってあげると、子どもも安心して全力で崩せます。逆に「あ、崩しちゃった…」と悲しい顔をすると、子どもは敏感に察してその遊びを避けるようになることも。
コツ4|片付けはママが主導でOK
1歳台で「自分で片付ける」を期待するのはまだ早い時期。崩したあとの片付けは、最初はママが歌いながら回収して、子どもには「これ入れてー」と1〜2個渡す程度で十分です。「片付けまで完璧に」を目指すと親も子も疲弊するので、最初の数年はこちらが主導でOK。
エビデンスまとめ|引用した一次資料

この記事で参考にしたエビデンスを一覧にまとめました。気になる方は原典もチェックしてみてください。
| テーマ | 出典 | 概要 |
|---|---|---|
| 感覚運動期と操作的活動 | Piaget, J.(1952)The Origins of Intelligence in Children | 0〜2歳は「触る・操作する」を通して世界を理解する時期 |
| 因果関係の理解 | Spelke, E.S.(2000)Core Knowledge. American Psychologist, 55(11) | 赤ちゃんは1歳前後で「自分の行動が世界に作用する」感覚を獲得 |
| 自由遊びの発達効果 | Whitebread et al.(2012)The importance of play. TACTYC | 子どもが選ぶ遊びは認知・社会・情緒の総合発達を促す |
| おもちゃの数と集中時間 | Dauch et al.(2018)The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play. Infant Behavior and Development | 少ないおもちゃで遊ばせる方が深い集中が見られる |
大切な注意点:ここで紹介した情報は一般的な発達情報であり、医学的アドバイスを代替するものではありません。お子さんの発達で気になることがあれば、かかりつけの小児科医や保健師にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 1歳半で1個も積めない、これって遅れている?
1歳半時点で「積む」より「並べる・崩す」が中心の子はとても多いです。発達は個人差が大きく、特に手先の微細運動には半年〜1年の幅があるのが普通。2歳頃に「気づいたら積めていた」というケースもよくあります。「興味を示しているか」「楽しそうか」を一番のサインにして、焦らず見守って大丈夫です。心配な場合は1歳半健診で相談してみてください。
Q2. 積み木を投げる時はどう対応すればいい?
「投げる」も因果関係を学んでいる行動の一つですが、人や物に当たると危険なので、対応はシンプルに「投げるなら片付けるね」と一度ゲームを終わらせるのが効果的。怒ったり叱ったりせず、淡々と片付けるだけで「投げる=遊びが終わる」と学習してくれます。代わりにボールなど投げてもいいおもちゃを渡してあげると、欲求は満たせます。
Q3. 1歳の積み木は何個くらいあればいい?
1歳台は10〜20個程度で十分です。Dauch et al.(2018)の研究では、おもちゃの数が少ない方が深い集中が観察されました。たくさんあるより、好きな数個を繰り返し使う方が学びが深まります。実際、我が家の息子も20個くらいの積み木を、ほぼ同じ組み合わせで毎日遊んでいます。
Q4. 積み木とブロック(レゴデュプロなど)、どっちが先?
1歳台は積み木→1歳半〜2歳でブロック導入が王道です。積み木は「物理を学ぶ」フェーズ、ブロックは「組み合わせて作る」フェーズで、認知発達の階段としては積み木が先。とはいえ、両方並行に置いてあっても問題ないので、好きな方で遊ばせてOKです。
Q5. 「崩す」を見守るのにイライラしてしまいます。どうしたら?
正直、ママもずっと優しくいられないですよね。私もガッカリしたし、最初の頃はイライラもしました。「ママ自身が積み木に手をかけすぎないこと」がコツです。「これ崩されてもガッカリしないライン」までしか積まないこと、子どもが「崩したい!」のサインを出したら早めに崩していいよと声をかけて自分も巻き込まれること。期待値を低く設定すると、自分にも子どもにも優しくなれます。
まとめ
- 「崩す」は発達上の重要行為。Piaget・Spelke・Whitebreadらの研究は、感覚運動期の操作的活動と因果関係学習として「崩す」を肯定している
- 1歳児が「崩すターン」を長く続けるのは自然。繰り返し学習・能動性・物理法則の体験——全部が同時に進んでいる
- 「積む」はある日突然できる。崩していた時間は無駄じゃなくて、ぐんぐん準備が進んでいた証拠
「せっかく積んだのに崩される」は、見方を変えれば「せっかく崩したいのに、いつもママが積んでくれる」。子ども目線では、積んでくれるママの存在こそがありがたい遊び相手なんです。
焦らず、比べず、今日のガシャーンを楽しんでくださいね。
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【免責事項】この記事は育児経験と一次資料の調査に基づく情報提供を目的としています。発達に関する診断・医療行為を代替するものではありません。個別の発達の心配については小児科医・保健師にご相談ください。




