保育園が始まってから、息子のイヤイヤがひどくなった気がします。
遊びの途中でお風呂に連れて行こうとしたとき。服を着せようとしたとき。やりたいことを止められたとき。のけぞって泣き叫びながら、床に寝転がります。ひどいときは、床に頭をぶつけようとすることもあります。
そのたびに声をかけて、抱っこして、なだめています。ただ、効いているのかどうかが分かりません。落ち着くまでの時間が短くなっている感じもしないまま、毎日続いています。
調べてみたら、癇癪の最中になだめると、かえって長引くという研究がありました。わたしが毎日やっていたことです。。。
この記事では、なだめる代わりにどうすればいいのかを、研究で分かったことからまとめました。「何もしない」といっても、放っておくことではありません。それと、先にひとつだけ。1回の癇癪は、平均すると3分ほどで終わるそうです。
この記事でいう「癇癪」は、ふつうの「イヤ」とは別のもの
2歳ごろの「イヤ」には、2種類あります。この記事で「癇癪」と呼んでいるのは、そのうちの片方です。
| ふつうの「イヤ」 | 癇癪 | |
|---|---|---|
| 見た目 | 「イヤ」と言う・首をふる・逃げる | 泣き叫ぶ・のけぞる・床に寝転がる |
| 言葉 | まだ届く | 届かない |
| 長さ | その場で終わる | 波があって、平均3分ほど |
| この記事での対応 | 選択肢に置き換える | 何もしないで、そばで待つ |
ふつうの「イヤ」は、自分でやりたい気持ちが言葉や態度に出ている状態です。こちらはまだ話が通じるので、声かけや選択肢が効きます。癇癪は、その気持ちが体ごとあふれて、本人にも止められなくなっている状態です。「何もしない」が効くのは、こちらのほうです。
癇癪の最中は、なだめるほど長引くそうです
アメリカのミネソタ大学に、癇癪を起こしている子どもの声を録音して、秒単位で分析した研究者がいます。Michael Potegalという人で、100件以上の癇癪の音声を解析しました。
分かったことのひとつが、癇癪の中身です。癇癪は「怒り」と「悲しみ」が同時に起きているのだそうです。泣き声の底にずっと悲しみの音があって、その上に、叫び声という怒りの波が重なって出てくる。
そして、この怒りの波をいちばん早く越える方法が「何もしない」でした。怒鳴らない、叩かない、なだめようともしない。
研究者はこれを「悲しみの罠」と呼んでいます。怒りの波が来ている最中になだめると、その行動を後押ししてしまう。結果として、怒りの時間が延びます。
怒りが抜けると、あとに残るのは悲しみです。そして悲しい子どもは、自分のほうから慰めを求めてきます。抱きしめるのは、そのタイミングだったということになります。
ちなみに、癇癪の長さは平均で約3分でした。ずっと続いているように感じますが、実際にはそれくらいで終わっていることが多いようです。
言葉が届かないのは、脳がまだそうなっていないからでした
イヤイヤ期の対応を調べていると、声のかけ方の話がたくさん出てきます。気持ちを認める、共感する、理由を説明する。どれも正しそうなのですが、その場でやってみると、届いている感じがしませんでした。
理由がありました。感情の制御や判断を担当しているのは前頭前野という部分なのですが、ここは脳の中でも成長がとくにゆっくりで、6歳ごろまでは非常にゆるやかにしか育ちません。急に伸びるのは8〜15歳ごろだと言われています。
つまり2歳前後の子は、「我慢する」という機能がまだ立ち上がっていない。聞き分けの問題ではなくて、その部品がまだ届いていない状態です。
そう分かってから、癇癪の最中に説明するのをやめました。伝わらない前提で見ていると、こちらも少し落ち着いていられます。
「あと一回だよ」が通じたり、通じなかったりする理由
わが家がよく使うのが「あと一回だけね」です。すべり台でも、絵本でも。その通りになる日もあれば、一回やったあとに「もう一回」が始まる日もあります。どちらになるかは、やってみるまで分かりません。
これは、交渉になっているからだと思います。
「あと一回」は、子どもから見ると「まだ続けられる」という返事です。一回で終わるかどうかは、そのとき本人が納得しているかどうかで決まってしまう。こちらに主導権がありません。
癇癪の予防として資料に出てくるのは、交渉ではなく選択肢のほうでした。
| 言い方 | 子どもの受け取り方 | |
|---|---|---|
| 交渉 | あと一回だよ | まだ続けられる(もう一回の余地が残る) |
| 選択肢 | お風呂、歩いて行く? だっこで行く? | どっちにしよう(お風呂に行くことは決まっている) |
ポイントは、どちらを選んでも、大人がやってほしいことは達成されるようにしておくことです。選ぶ楽しさは渡して、やるかやらないかは渡さない。
この年齢の子は「自分で決めたい」が強くなっている時期でもあります。選択肢は、その気持ちの行き先を用意しておくやり方ということになります。
わが家がもめやすい場面に当てはめると、こうなりました。
| 場面 | これまで | 言い換えると |
|---|---|---|
| 遊びの途中でお風呂 | あと一回ね | おもちゃ、1個だけ持っていく? 置いていく? |
| 服を着せる | 着替えるよ | こっちの服? こっちの服? |
| 公園から帰る | そろそろ帰るよ | 走って帰る? だっこで帰る? |
毎回これで収まるわけではありません。それでも、「イヤ」の一言で終わっていたところに、考える余地が挟まるのは違いました。
いちばん効くのは、起きたあとではなく起きる前でした

資料を読んでいて、繰り返し出てきたのがこれです。癇癪の対処でいちばん効果があるのは予防だ、と。
癇癪そのものを止める方法を探していたので、これは意外でした。挙がっていたのは、こういうものです。
- 疲れ・空腹・体調不良を先に潰す(これがいちばん大きいとされています)
- 毎日の流れを、だいたい同じ形にしておく
- 切り替えの前に、これから何をするか伝えておく
- 年齢に合った選択肢を出す
ここで思い当たったのが、冒頭に書いた「保育園が始まってから増えた」でした。
慣らし保育が始まって、生活が変わりました。起きる時間が早くなって、日中は家ではない場所で過ごして、帰ってくる頃にはかなり疲れています。本人の中身が変わったというより、疲れが増えた時期が重なっていたのかもしれません。
そう考えると、夕方のお風呂で毎回もめるのも筋が通ります。いちばん疲れている時間に、いちばん切り替えの多いことをやらせようとしていたことになります。
入園や引っ越し、下の子が生まれたタイミングでイヤイヤが強くなったように見えるときは、性格が変わったのではなく、引き金が増えている時期なのだと思います。
「何もしない」は、放っておくことではありません
「何もしない」というのは、言葉をかけない・なだめないという意味です。その場を離れて放っておく、という意味ではありません。安全に関わる部分は、止めます。
うちの息子は、ひどいときに床に頭をぶつけようとします。最初に見たときは驚きましたが、調べてみると幼児のうち最大15%が、怒ったときに頭を壁や床にぶつけることがあるそうです。自分を落ち着かせる方法のひとつ、という見方が多いようでした。
とはいえ、痛いことに変わりはないので、わが家では始まりそうになったら体を支えて止めています。言葉で「やめて」と言うより、間に入るほうが早いです。あざになったことはありません。
資料には、相談したほうがいい場面も挙がっていました。
- あざができている
- けがをする、眠れないほど続く
- 頻繁で、かつ目が合わない・言葉の遅れ・手を噛む/くるくる回るなどの繰り返しの動きを伴う
このどれかに当てはまるなら、小児科で一度見てもらうのが安心だと思います。
では、始まったら実際どうするのか
読んだことを、その場の順番に置き直すとこうなりました。
1. 先に、安全だけ整える
頭をぶつけそうなら体を支える。周りに硬いものがあれば、どかす。ここは言葉より先に手が出ていい場面です。うちはここだけ毎回やっています。
2. 見える場所にいて、話しかけない
離れるのではなく、そばにいるけれど何も言わない。怒りの波が来ているあいだは、説明も共感も届きにくいとされています。ここで沈黙していられるかが、いちばん難しいところでした。
3. 泣き方が変わったら、近づく
叫び声が減って、泣き声だけになる瞬間があります。怒りが抜けて悲しみが残った合図で、ここからは子どものほうから寄ってきます。抱っこが効くのはこのタイミングでした。
4. 話すのは、落ち着いてから短く
泣いている最中に言ったことは残りません。終わってから「いやだったね」「次はこうしようね」を一言だけ。長い説明は、この年齢ではまだ受け取れない前提でいます。
この順番にしてから、わたしが癇癪の最中にやることが、ほとんど無くなりました。やることが減ったぶん、こちらが消耗しにくくなった気がしています。
うちは多いほう? 頻度の目安
毎日やられていると、うちだけひどいのではないかと思えてきます。数字が出ていました。ここで数えているのは、冒頭で分けた「癇癪」のほうです。ふつうの「イヤ」まで数えると、もっと多く見えるはずです。
| 項目 | 割合・回数 |
|---|---|
| 2歳児で、過去1ヶ月に1回以上の癇癪があった子 | 75% |
| 2歳児の癇癪の回数 | 平均 週4回 |
| 3歳児の癇癪の回数 | 平均 週5回 |
| 1日1回以上ある子 | 2歳児の 20%(3歳児18%・4歳児10%) |
| 癇癪1回の長さ | 平均 約3分 |
2歳児の5人に1人は、毎日どこかで癇癪を起こしている計算になります。
相談の目安として挙がっていたのは、15分以上続く癇癪が、週3回以上あるかどうかでした。1〜3歳の5〜7%がここに当てはまるとされています。
それでも折れてしまう日のこと

ここまで書いてきたことを、わたしは毎回できているわけではありません。
泣き叫ばれると、結局こちらが折れて、要求どおりにしてしまう日があります。研究のとおりなら、これは癇癪を後押しする対応です。分かっていても、そうなる日はあります。
ただ、資料を読んで整理がついたことがひとつあります。折れていい場面と、折れないほうがいい場面は違う、ということです。
| 例 | わが家の扱い | |
|---|---|---|
| どちらでもいいこと | もう少し遊ぶ、別の服を着る、おもちゃを持って出る | 折れる日があってもいい |
| やらないと困ること | お風呂・歯磨き・手洗い | やる前提。選択肢で進める |
全部に一貫した態度で臨もうとすると、こちらが持ちません。ここだけは通す、と決めるものを少なくしておくほうが、結果として通せています。
ちなみにうちの息子は、寂しいときや悲しいときは、泣き叫ぶのではなく「しょぼーん」といじけます。夫が仕事に出かけるときなどです。この顔のときは、抱っこがよく効きます。怒って泣いているときとは、明らかに別の反応でした。
怒りと悲しみは同時に起きている、という話を読んでから、うちの場合はこの2つが場面ごとに分かれて出ているのだと思うようになりました。悲しい顔のときは近づいて、怒っているときは少し待つ。いまはそこを見分けるようにしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 癇癪はどれくらい続きますか?
100件以上の癇癪を音声で分析した研究では、平均で約3分でした。その場にいると長く感じますが、怒りの波そのものは短いようです。15分以上続くものが週3回以上ある場合は、相談の目安として挙げられています。
Q2. 保育園が始まってから増えた気がします
癇癪の引き金として最初に挙げられるのが、疲れ・空腹・体調です。入園や引っ越しのあとは、起きる時間も過ごし方も変わるので、疲れが増えている時期にあたります。わが家も慣らし保育が始まってから増えました。本人が変わったというより、引き金が増えている時期なのだと思います。
Q3. 癇癪のときに頭を床にぶつけます。心配ないですか?
幼児の最大15%がやることがあると言われていて、それ自体は珍しい行動ではありません。ただ、あざができている、けがをする、眠れないほど続く、頻繁で目が合わない・言葉の遅れ・繰り返しの動きを伴う、といった場合は小児科で見てもらうのが安心です。わが家は始まりそうになったら体を支えて止めていて、あざになったことはありません。
Q4. 要求を通してしまう日があります
わが家もあります。研究のとおりなら癇癪を後押しする対応なのですが、毎回きれいに通すのは現実的ではありません。お風呂・歯磨き・手洗いのように、やらないと困ることだけ通す前提にして、あとは折れる日があってもいい、という分け方にしています。
Q5. 「あと一回だよ」は言ってもいいですか?
通じる日もあります。ただ、これは交渉なので、続けられる余地が残ります。やめてほしい場面では、「歩いて行く? だっこで行く?」のように、どちらを選んでも先に進む形にしておくほうが、もめにくくなります。
Q6. 泣き叫ぶのと、しょんぼりするのは違うものですか?
研究では、癇癪の中に怒りと悲しみの両方が含まれているとされています。怒りが抜けたあとに悲しみが残り、そうなると子どものほうから慰めを求めてくる、という流れです。わが家では場面によって分かれて出ていて、しょんぼりしているときは抱っこがよく効きます。
Q7. 気持ちを言葉にしてあげるのは意味がないのでしょうか?
意味がないというより、タイミングの問題だと思います。怒りの波が来ている最中は届きにくく、なだめると長引くとされています。落ち着いたあとや、癇癪が起きていないときに話すぶんには、言葉のやりとりとして積み重なっていきます。
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lino
2024年9月生まれの男の子を育てているlinoです。この記事を書いているのは、息子が2歳になったところ。慣らし保育が始まってからイヤイヤが増えた気がして、声のかけ方を調べるつもりで読み始めたら、出てきたのは「その場では何もしない」という話でした。わが家はまだ毎回そのとおりにはできていませんが、待っているあいだの気持ちはずいぶん変わりました。同じ時期の方の材料になればうれしいです。
まとめ
- 癇癪の最中になだめると、かえって長引くとされています。怒りの波を早く越えるのは「何もしない」でした
- 言葉が届かないのは聞き分けの問題ではなく、我慢を担当する部分がまだ育っていないから
- 「あと一回だよ」は交渉なので余地が残ります。どちらを選んでも先に進む選択肢のほうがもめにくい
- いちばん効くのは予防。疲れ・空腹・体調を先に潰す。入園や引っ越しのあとに増えるのは自然なこと
- 「何もしない」は放置ではありません。安全に関わることは止める
- 2歳児の癇癪は平均で週4回、5人に1人は毎日。1回の長さは約3分
声のかけ方を工夫する話だと思って調べ始めたのですが、出てきたのはやることを増やさない方向の答えでした。わが家はまだ、毎回そのとおりにはできていません。それでも「いま何を言っても届かない時間なんだな」と思えるだけで、待っているあいだの気持ちがずいぶん違います。
この記事で読んだ資料
ミネソタ大学 Michael Potegal氏らの癇癪の音声分析研究(2011年)/1〜6歳の癇癪の実態と養育者への影響に関する調査/米国国立生物工学情報センター(NCBI)StatPearls「Temper Tantrums」/Child Mind Institute の癇癪対応ガイド

