リトミックの効果は本当?通っていない親が研究を調べました

リビングで手拍子をする母と、リズムに合わせて体を揺らす1歳の男の子(水彩イラスト)

「リトミックって、実際のところどのくらい効果があるんだろう」。そう思って検索してみたことはないでしょうか。私はあります。そして、検索結果を上から順に開いていって、途中で閉じました。出てくるのが、ほとんど教室のページだったからです。

これは教室が悪いという話ではまったくなくて、リトミックについて熱心に発信しているのがそもそも教室の方々なので、当然といえば当然なんですよね。ただ、「通わせるかどうか迷っている側」からすると、判断材料がひとつも増えないまま検索が終わってしまう。

この記事では、その足りない部分を埋めるつもりで、教室以外の資料——日本の団体が掲げている目的や、海外で行われた研究——を読んで整理しました。わが家はリトミック教室に通っていません。だからこそ、売る側でも辞めさせたい側でもない立場でまとめてみようと思います。

目次

音楽の時間としては十分。「頭が良くなる」だけは期待しすぎないほうがよさそう

調べてみて、いちばんはっきりしたのはこの2つでした。

  • 「音楽が好きになる」「リズムに合わせて体を動かすのが楽しくなる」「親子で過ごす時間になる」——このあたりは、どの研究でも否定されていません。そもそも検証の対象にすらなっていない部分です
  • 一方で、「音楽をやると頭が良くなる」「集中力がつく」といった、音楽そのものから離れた力への効果のほうは、条件をそろえて調べると、やった子とやっていない子でほとんど差がありませんでした

つまり、「リトミックには意味がない」という話ではまったくないんです。否定されかけているのは、「音楽の外側にまで効果が広がる」という部分だけ。ここを混ぜてしまうと、とたんに話が乱暴になります。

そしてこの記事でいちばんお伝えしたいのは、その結論そのものより、「何と比べたか」で結果がひっくり返るという仕組みのほうです。ここを知っておくと、リトミックにかぎらず、これから出会ういろんな習い事の広告の読み方が変わると思います。順番に見ていきますね。

そもそもリトミックって、何をするものだったのか

タンバリンを両手で持って鳴らす1歳の男の子
音楽に合わせて体を動かす。やることは、だいたいこういうことでした

効果の話に入る前に、リトミックがもともと何を目指していたものなのかを確認しておきます。ここが実は、答えの半分くらいを先に教えてくれていました。

リトミックは、スイスの音楽教育家エミール・ジャック=ダルクローズ(1865〜1950)が考案したものです。日本ジャック=ダルクローズ協会(国際リトミック指導者連盟の、日本で唯一の認定支部だそうです)をはじめ、日本でもいくつかの団体がその流れを受け継いでいます。

日本で0歳から5歳までを対象に指導者養成を行っている「特定非営利活動法人 リトミック研究センター」は、リトミックを「エミール・ジャック=ダルクローズが考案した教育法」と説明したうえで、日本での柱として次の3つを挙げています。

  • 生活習慣:自主性・集中力・自立心・責任感などを育てる
  • 音感教育:リズム感や音感を育てる
  • 情操教育:音楽を通じた自己表現、感受性豊かな情操を育む

ここ、けっこう大事なところだと思っていて。推進している団体自身が掲げているのも、「生活習慣」「音感」「情操」なんですよね。「知能が伸びます」「学力が上がります」とは書かれていない。つまり、あとで出てくる研究の話と、本家の主張は正面からぶつかっていないんです。

日本の公的な位置づけも「表現」の領域

幼稚園や保育園で音楽・リズム遊びがどう扱われているかも見てみました。文部科学省の幼稚園教育要領では、音楽やリズムの活動は「表現」という領域に入っています。この領域は「豊かな感性を育て、感じたことや考えたことを表現する意欲を養い、創造性を豊かにする観点から示したもの」とされていて、ねらいは次の3つです。

  • いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ
  • 感じたことや考えたことを様々な方法で表現しようとする
  • 生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ

具体的な内容としても「音楽に親しみ、歌を歌ったり簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう」と書かれています。「楽しさを味わう」。国の文書としてはずいぶん素直な言い方だなと思いました。ここにも、頭が良くなるとは一言も書いてありません。

なお、日本の公的機関や学会が「リトミックの効果」そのものを検証して見解を出している資料は、私が探した範囲では見つかりませんでした。なので、次の章で紹介するのは海外で行われた研究です。

調べて分かったこと:「何と比べるか」で、結果がまるごと変わる

ここからが本題です。

音楽のおけいこが子どもの認知能力(記憶力や考える力、学力など)に効くのかどうかは、実はずっと前から研究されているテーマでした。そして、それまでに出ていたたくさんの研究をまとめて分析し直した報告があります。ジョバンニ・サラさんとフェルナン・ゴベさんが2017年に発表したもので、音楽のトレーニングが「音楽以外の力」にまで広がるのかを検証したものです。

この報告のポイントは、「音楽をやった子」を “誰と” 比べたかで、答えがはっきり分かれたところにあります。

効果量、という数字の見方だけ先に

この先に「0.25」みたいな数字が出てくるので、読み方だけ先に紹介します。これは効果量と呼ばれるもので、ざっくり「差がどのくらい大きいか」を表します。目安としては0.2くらいで「小さい」、0.5で「中くらい」、0.8で「大きい」と言われることが多いです。0に近いほど「差がほとんどない」ということになります。

① 何もしていない子と比べると、0.25

まず、音楽をやったグループと、特に何もしていないグループを比べた場合。このときの効果量は0.25だったと報告されています。「小さい」と「中くらい」のあいだ、という感じの数字です。

これだけを見ると、「やっぱり音楽って効くんだ」と思いますよね。実際、こういう比較の結果が「音楽で頭が良くなる」という話の元になってきた面はあるようです。

② 別のことをしていた子と比べると、0.03

ところが、比べる相手を変えるとまったく違う景色になります。

音楽をやったグループと、音楽じゃない何か(スポーツや別の習いごとなど)をやっていたグループを比べた場合。このときの効果量は、0.03だったと報告されています。ほぼゼロです。しかも幅(信頼区間)を見るとマイナス側にもはみ出していて、「差があるとは言いきれない」という状態でした。

この 0.25 と 0.03 の並びが、私にとっていちばん腑に落ちた部分でした。何が言えるかというと、こういうことです。

効いていたのは「音楽だったこと」ではなく、「何かをやっていたこと」のほうかもしれない。

週に1回どこかへ通って、先生の話を聞いて、同じ年ごろの子と過ごして、家では親がその時間のために準備をして。そういう時間を持っている子と、まったく持っていない子を比べたら、そりゃあ差は出ますよね。でもその差は、音楽じゃなくてサッカーでも、絵の教室でも、たぶん同じように出る。リトミック固有の魔法として説明できる部分は、ほとんど残らなかった——というのが、この報告の言っていることだと理解しました。

③ そして、研究の質が上がるほど効果は小さくなる

もうひとつ、書かれていて印象に残った指摘があります。「効果量は、実験デザインの質と逆の関係にある」という趣旨のことです。つまり、きちんと条件をそろえた研究ほど、効果が小さく出る。

これは怖い話でもあり、ありがたい話でもあります。怖いのは、雑な研究ほど「効果あり」の派手な数字が出て、それが広告や記事に載りやすいということ。ありがたいのは、「効果がある」という記事を見たときに、“それ、何と比べたんだろう” と一回だけ考えればよくなるということです。私はこの視点をもらえただけでも、調べた甲斐があったと思っています。

この著者たちは全体として、「学習の遠い転移(far transfer=離れた分野への効果)は、めったに起こらない」という立場を取っています。音楽にかぎった話ではなく、チェスや脳トレも含めた広い話として、です。

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早期教育の効果を同じように調べた記事です。英語のほうは「聞き流すだけでは伸びにくい」「人とのやりとりが効く」という、リトミックとはまた違う結論になっていて、並べて読むとおもしろいと思います。

ただし、「効果ゼロで決まり」でもありません

ここで話を終わらせると、それはそれで一方的になってしまうので、反論のほうも書いておきます。

この一連の分析に対して、ビガンさんとティルマンさんという研究者が2021年(掲載は2022年の『Memory & Cognition』誌)に反論を出しています。中身をざっくり言うと、「分析のときの分け方に問題があって、音楽グループ側の効果が実際より小さく見積もられている」という指摘です。同じデータを公開されているプログラムで分析し直したところ、統計的に意味のある効果量 g = 0.234 が出たと報告しています。

0.234。さっきの目安でいうと「小さい」寄りですが、ゼロではありません。この論文は、音楽を「小さいけれど統計的に意味のある遠い効果を許す点で、特別かもしれない娯楽的な活動」という趣旨の言い方で締めくくっています。「音楽すごい!」でも「音楽は無意味」でもない、けっこう抑制のきいた着地です。

なので、いまの状況をなるべく正確に言うとしたら、こんな感じだと思います。

  • 「音楽をやると音楽以外の力も伸びる」という主張は、以前ほど強くは支持されていない
  • でも「効果ゼロで確定」でもなく、研究者のあいだでまだ議論が続いている
  • 少なくとも、「頭を良くするために通わせる」という動機は、根拠としては弱そう

白黒つかない結論でごめんなさい、という気持ちもあるのですが、たぶんこれが今いちばん誠実な書き方だと思います。「専門家の意見が割れている」と分かること自体が、けっこう使える情報だとも思うので。

ちなみに、0〜2歳のリトミックはそもそも検証されていません

これは調べていて「あ、そうなんだ」と思った点です。

この手の研究で対象になっているのは、だいたい3歳から16歳くらいの子どもたちです。つまり、日本で人気のある0歳・1歳・2歳向けのリトミック(ベビーリトミック)については、効果を検証した研究がそもそもほとんど無いということになります。

これは「効果がない」という意味ではありません。「まだ誰もちゃんと調べていない」という意味です。ここは分けて受け取ってほしいところで、否定の材料にも肯定の材料にもならない、というのが正確なところだと思います。

ただ、判断の材料としては使えます。0〜2歳で通うかどうかを考えるとき、「効果のエビデンス」を判断軸にすること自体が、あまり成立しないということですから。だったら、「その時間を親子で楽しめそうか」「無理なく通えるか」で決めていいことになります。そのほうが、迷う軸がひとつ減って楽だなと私は思いました。

比較表:期待していいこと/期待しすぎないほうがいいこと

ここまでの内容を、リトミックについてよく聞くフレーズごとに整理してみました。「効く/効かない」の二択ではなく、どのくらいの温度で受け取るかの表だと思ってもらえたらうれしいです。

よく聞く効果調べた資料での扱い受け取り方の目安
頭が良くなる・IQが上がる別の活動をした子と比べると、効果はほぼ見られなかったという報告(0.03)。再分析では小さな効果が残るという反論もあり議論中期待しすぎない
記憶力・集中力がつく同じく「音楽の外側への効果」の話。研究の質が上がるほど小さくなる傾向が指摘されているおまけくらいに
学力・成績が上がる検証された中でも、とくに効果が見えにくかった部分期待しすぎない
リズム感・音感が育つ音楽の中での話(近い効果)。ここは否定されていない。日本の団体も「音感教育」を柱に挙げている期待していい
音楽が好きになるそもそも検証の対象外。否定する材料はどこにもない期待していい
体を動かすのが楽しくなる同上。幼稚園教育要領も「楽しさを味わう」と書いている期待していい
親子で過ごす時間になる研究の話とは無関係。通う理由としてこれ以上のものはない期待していい
同年代の子や先生と関わる機会になる効果として検証されてはいないが、外に出るきっかけとしての価値は別枠場としての価値で
0〜2歳のうちにやらないと手遅れこの年齢帯を対象にした検証がほぼ無い。急かす根拠は見当たらない気にしなくてよさそう

こうして並べてみて思ったのは、「期待していい」の欄に入っているものが、けっこう魅力的だということでした。音楽が好きになる、体を動かすのが楽しい、親子の時間になる。これって、そもそも多くの人がリトミックに求めていたものそのものじゃないでしょうか。

削られたのは、あとから足された「頭が良くなる」という付加価値のほうなんですよね。本体は無傷です。

わが家はどうしたか:体験はした。でも通うのは「そこまででもないな」

教室の入口で母のうしろに隠れる1歳の男の子
支援センターのリトミック的な活動には行きました

ここでうちの話も書いておきます。息子は2024年9月生まれで、いま1歳11か月です。

わが家はリトミック教室には通っていません。ただ、まったく縁がなかったわけでもなくて、支援センターでリトミック的な活動を体験したことはあります。音楽に合わせて体を動かしたり、手を叩いたり、という時間です。感想としては、単純に楽しかったです。あの場の空気は良いものだなと思いました。

あと、家でも似たようなことはしています。「こどもちゃれんじ」の中に音楽に合わせて体を動かすパートがあって、それを一緒にやっているという感じです。ちゃんと構えて「さあリトミックの時間!」とやっているわけではなく、流れてきたら一緒に動く、くらいのゆるさですが。

「いいよ」と聞いて、一度は迷いました

周りから「リトミックいいよ」と聞いて、通わせてもいいかな、と思った時期はありました。体験も楽しかったし、悪いものだとは全然思っていなかったので。

でも最終的には、「そこまででもないな」という判断になりました。理由は難しい話ではなくて、いま家でやっていることと、支援センターで体験できることで、うちには足りているかな、と感じたからです。ゼロか教室かの二択じゃない、というのが大きかったと思います。

そのうえで今回いろいろ調べてみて、あのときの判断を「間違ってなかった」と思ったかというと、実はちょっと違います。むしろ思ったのは、「通わせていたとしても、それはそれで正解だったな」ということでした。楽しい時間を買っていたことになるので、それはちゃんと価値のある買い物です。

だから、この記事は「通わせなくていいですよ」と言いたい記事ではありません。「頭が良くなるから」という理由で通うと、あとでモヤモヤするかもしれません。でも「楽しいから」で通うぶんには、今回調べたどの資料とも、何ひとつ矛盾しません。そこだけです。

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通わせるか迷っている人へ:判断の分かれ目

「で、結局どうしたらいいの」というところを、私なりに整理してみます。調べたことをふまえると、判断の軸はだいぶシンプルになりました。

通う方向で考えていいと思うとき

  • 体験に行って、親子ともに楽しかった(これが最強の理由です)
  • 家にこもりがちで、決まった時間に外に出る予定がほしい
  • 同じ年ごろの子や、話せる大人と会える場所がほしい
  • 音楽を家で流す習慣がなく、きっかけとして外の力を借りたい
  • 月謝が、家計の中で「まあ払えるね」の範囲に収まっている

いったん立ち止まってもいいと思うとき

  • 「頭が良くなるらしいから」がいちばんの動機になっている(ここは根拠が弱そうです)
  • 「今やらないと手遅れ」という焦りから来ている(0〜2歳向けの検証はそもそも無いので、急かされる筋合いはないです)
  • 送り迎えの負担が大きくて、行く前から気が重い
  • 月謝が家計を圧迫していて、「元を取らなきゃ」という気持ちが出ている
  • 子どもが毎回いやがっている

最後のところ、あえて書きました。「効果があるはずだから、いやがっても続けさせる」がいちばん割に合わない選択だと思います。今回調べた範囲では、その我慢の先に約束されているものが見当たらないので。逆に、楽しく通えているなら、効果うんぬんの話はまるごと無視して大丈夫です。

家でやるなら、これくらいで十分だと思っています

リビングで音楽に合わせて一緒に踊る母と1歳の男の子
スピーカーで音楽をかけて、一緒に動く。今はこれで足りています

「通わないけど、何かしたい」という場合。うちがやっているのは、本当にこの程度です。

  • 好きな曲をかけて、一緒に体を揺らす
  • 手を叩く、足踏みする。テンポを速くしたり遅くしたりしてみる
  • 教材や動画に音楽のパートがあれば、隣で一緒にやる
  • 支援センターや児童館で音楽の会があれば、行ってみる(たいてい無料です)

これで「教室と同じ効果があります」と言うつもりはありません。専門の先生がやることには、当然それなりの意味があると思います。ただ、「音楽が楽しいものだと知る」というところまでなら、家でも支援センターでも届くのかなと。うちはそこで足りている、というだけの話です。

楽器のおもちゃを買うか迷うなら、借りるという手もあります

音楽に興味が出てきたときに悩むのが、楽器のおもちゃを買うかどうかだと思います。太鼓、シロフォン、タンバリン。どれも「気に入るか分からないのに、場所も値段もそれなりにかかる」ものです。

うちはおもちゃのサブスク(AND TOYBOX)を使っていて、音の出るおもちゃはだいたいここで借りました。「たたいてベビードラム」「音いっぱいつみき」「森の音楽会」あたりです。

合わなければ次の交換で返せるので、「買って合わなかったらどうしよう」を考えなくて済みます。実際、そこまでハマらずに返したものもありました。

音楽のおもちゃはハマるかどうかの差が大きいぶん、いきなり買うより向いているジャンルだと思っています。

AND TOYBOXで届いたおもちゃ

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よくある質問

Q1. リトミックは何歳から始めるのがいいですか?

「この年齢から始めないと遅い」という根拠のある線は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。日本の団体では0歳児から5歳児までを対象にしているところがありますし、幼稚園・保育園でも音楽やリズムの活動は日常的に行われています。ただ、効果を検証した研究の対象はだいたい3歳以上で、0〜2歳のリトミックについてはそもそもデータがほとんどありません。なので「何歳から」は、エビデンスで決めるより「親子が楽しめそうなタイミングで」くらいの受け取り方でいいのかなと思っています。

Q2. 「リトミックは意味ない」と書かれているのを見ました。本当ですか?

「意味ない」は言いすぎだと思います。研究で疑問符がついているのは「音楽の外側にまで効果が広がるか(頭が良くなる、学力が上がるなど)」という部分だけで、「音楽が好きになる」「リズム感が育つ」「その場が楽しい」といったところは、そもそも検証の対象にすらなっていません。否定されていないものを否定された扱いにするのは、フェアじゃないですよね。削られたのは付加価値の部分で、本体は残っている——という理解がいちばん近いと思います。

Q3. すでに通わせています。やめたほうがいいでしょうか?

楽しく通えているなら、やめる理由はどこにもないと思います。今回の内容は「効果がないから通うな」という話ではまったくなくて、「楽しいから続ける」は、これらの研究結果と何ひとつ矛盾しません。もし判断に迷うとしたら、効果ではなく「毎週その時間を、親子で気持ちよく過ごせているか」のほうを見てあげてください。そこがイエスなら、それだけで十分な理由になります。

Q4. 家でやるのと、教室に通うのでは違いますか?

この2つを直接比べた研究は見つけられませんでした。感覚的な話になりますが、教室には「決まった時間に外に出る」「専門の先生がいる」「ほかの子や親と会える」という、家では作りにくい要素があります。逆に家なら、費用も送り迎えもゼロで、機嫌のいいときだけできる。どちらが上という話ではなく、手に入るものが違うのかなと思います。うちは体験と家でのゆるい取り組みで足りていますが、それは単にうちの事情です。

Q5. リトミックとピアノなどの楽器、どちらを先にやるべきですか?

順番を決める根拠になるような資料は見当たりませんでした。ただ、今回の研究がひとつヒントをくれていて、音楽をやることで伸びるのは基本的に「音楽の中の力」のようです。ということは、「将来ピアノを弾けるようにするための下準備」としてリトミックを位置づけると、少し期待が重くなるかもしれません。音を聞くのが好き、体を動かすのが好き、という土台をつくる時間と考えるほうが、気持ちが楽だと思います。

Q6. 効果がはっきりしないなら、月謝はもったいないでしょうか?

ここは、何を買っているつもりかで変わると思います。「将来の学力」を買っているつもりだと、たしかに割に合わないかもしれません。でも「毎週の楽しい時間」「家から出る予定」「親が少し息をつける場所」を買っているなら、値段どおりの買い物です。習い事全般に言えることですが、効果で測ろうとすると、たいていのものは分が悪くなるんですよね。うちは「そこまででもないな」で見送りましたが、それは効果を疑ったからではなく、今の生活に必要かどうかで決めた、という感じです。

Q7. 日本にはリトミックの効果を調べた公的な資料はありますか?

私が探した範囲では、日本の公的機関や学会が「リトミックの効果」を検証して見解を出している資料は見つけられませんでした。あるのは、文部科学省の幼稚園教育要領で音楽・リズム活動が「表現」の領域に位置づけられていること、そして日本の指導団体が掲げている目的(音感・情操・生活習慣)まで。効果検証の部分は海外の研究に頼るしかないのが現状のようです。無いものを「ある」とは書けないので、そのままお伝えしておきます。

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この記事を書いた人

lino(著者)と息子が公園で手を繋いで歩く後ろ姿

lino

2024年9月生まれの男の子を育てているlinoです。息子は今1歳11か月。リトミック教室には通っていませんが、支援センターでリトミック的な活動を体験したことはあって、あれは普通に楽しかったです。家では「こどもちゃれんじ」の音楽に合わせて一緒に体を動かす程度のことをしています。周りから「リトミックいいよ」と聞いて一度は通わせようかと迷い、最終的に「そこまででもないな」と決めました。この記事は、そのときに知りたかったことを、あとから自分で調べ直してまとめたものです。教室とも教材会社とも関係がないので、遠慮する相手がいないぶん、思ったとおりに書いています。

まとめ:削られたのは「頭が良くなる」だけ。楽しい時間は無傷です

  • 音楽のおけいこの効果は、何もしていない子と比べると0.25、別の活動をしていた子と比べると0.03だったという報告がある。効いていたのは「音楽だったこと」ではなく「何かをやっていたこと」かもしれない
  • 研究の質が上がるほど効果は小さくなるとも指摘されている。「効果あり」の記事を見たら、“それ、何と比べたの?” と一度だけ考えるのがおすすめ
  • ただし「効果ゼロで確定」ではない。再分析ではg = 0.234という小さな効果が残るという反論もあり、議論は続いている
  • 0〜2歳のリトミックは、そもそも検証されていない。「今やらないと手遅れ」と急かされる根拠は見当たらない
  • 否定されていないのは、音楽が好きになる/リズムが楽しくなる/親子の時間になるという部分。多くの人が求めていたのは、たぶんこっち

調べる前は、正直「効果がないなら通わせなくてよかったな」という結論になるかと思っていました。でも実際に読んでみたら、そういう話ではありませんでした。減ったのは「頭が良くなる」という付け足しの部分だけで、リトミックが本来やろうとしていたこと——音楽を好きになる、体で感じる、表現する——は、まるごとそのまま残っていたんです。

だから、通わせている方は安心して続けてください。通わせていない方も、焦らなくて大丈夫です。うちみたいに、支援センターと家の音楽でゆるくやる、というのもひとつの形です。どっちを選んでも、この記事で紹介した資料と喧嘩しません。

結局のところ、判断の材料は「効果が何%」みたいな数字じゃなくて、「その時間、うちは楽しめてる?」のひとつだけでいいのかもしれません。私はそう思うことにしました。

【参考資料】
・Sala, G. & Gobet, F.(2017)”Does Far Transfer Exist? Negative Evidence From Chess, Music, and Working Memory Training”, Current Directions in Psychological Science, 26(6), 515–520 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5724589/
・Bigand, E. & Tillmann, B.(2022)”Near and far transfer: Is music special?”, Memory & Cognition, 50, 339–347 https://doi.org/10.3758/s13421-021-01226-6
・文部科学省「幼稚園教育要領」領域「表現」 https://www.mext.go.jp/content/1384661_3_2.pdf
・特定非営利活動法人 リトミック研究センター「よくある質問」 https://www.eurhythmics.or.jp/learn/faq/
・日本ジャック=ダルクローズ協会 https://www.j-dalcroze-society.com/

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この記事を書いた人

2024年9月生まれの男の子を育てるママ。育児の「これって大丈夫?」をエビデンスと実体験で深堀りしています。正直に使ってよかったものだけ紹介中。Instagram / Threads:@lino_toylog

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